第20回 PDFを扱えるオンラインサービスの紹介(前編)
〜増え続けるインターネットのPDF活用ツール〜

PDFオンラインサービスの注意点

PDFはビジネスや学術界で広く利用されていますが、全ての人がPDFの編集や加工に精通しているわけではありません。PDFのページの差し替えや結合などちょっとした後加工ができるとPDFの応用の幅が広がります。そんな時、今まではパソコンのソフトウェアを使って加工・編集しようと考えるのが普通でした。無償で使えるソフトウェアもありますが、使える機能はかなり限定的。かたや、有償の製品は多機能で高品質と謳われているものはそれなりの値段になります。やりたいことは1年に数回のページの差し替えだけ。使うこともない機能に数千円の出費は高すぎると感じる方も多いのではないでしょうか。
そんなとき、今回ご紹介するインターネット上のサービスを検討してみてはいかがでしょうか。高価なソフトウェアや高度なコンピュータースキルも不要、インターネットに接続できる環境さえあれば、どこからでもアクセスでき、PDFの作成、編集、加工が可能になります。さらに、多くのサービスが無料で使え、操作性など使い勝手もよく、初心者でも容易に使いこなせるように設計されています。
こうしたオンラインサービスの多くがスマートフォンでも使えるようになってきています。ワイヤレスでネットに常時つながることが普通になり、思い立ったらすぐに使えるスマートフォンで、いつでも手軽にPDFの作成、加工、編集ができるようになれば、オンラインサービスは手放せなくなるでしょう。

インターネットの上でPDFを加工する

インターネット上のPDFファイルを作成、編集、加工できるサービスには多くの選択肢があります。これらのサービスはChromeやEdgeなどWebブラウザ上で動作し、ソフトウェアのダウンロードやインストールは不要です。操作したいPDFファイルをサーバーに送付して、サーバー上でファイルを加工します。
ネット上で提供するサービス全般にいえることですが、他の会社のサービスを自社で提供することも比較的簡単なため、時間と共にサービスにあまり大きな差がなくなるということがあります。なので、こうしたサービスを選ぶ基準は、機能や品質も大事な要素ではありますが、使いやすさや料金体系などに重きを置いた方がよいでしょう。
また、機密性の高い文書を扱う場合は、実績やセキュリティー、プライバシー保護の方針を確認し、信頼できるサービスを選択するとよいでしょう。

代表的な無料PDFオンラインサービスの例

図1 PDF24 Toolsの画面

インターネット上のPDFオンラインサービスをいくつかご紹介したいと思います。機能だけを考えると、どこも似たり寄ったりな印象です。そこで今回は有名な「PDF24 Tools」(https://tools.pdf24.org/ja/)を例に、機能について見ていきましょう。「PDF24 Tools」がわかれば、他のサービスも大枠はほぼ同じと考えて問題ないでしょう。
また、オンラインサービスの特徴のひとつとして、改善速度が速く、かつ短時間でそうした改善を提供できることが挙げられます。ちょっと見ないうちに機能が大きく変わってしまうこともよくあります。なので、サービス自体がどんどん変化していくという前提で使い方にも工夫が必要でしょう。基本的に無料で利用できるものが多いので、

・複数のサービスを同時に利用する
・機能をいろいろ試しながら自分に適したサービスを選ぶ
・紹介記事や活用事例など情報収集を怠らない

という、ちょっと贅沢な感じではありますが、こんな使い方をお薦めです。
「PDF24 Tools」は、オンライン版とデスクトップ版があり、両方とも無料で提供されていますが、これらは、Webページやアプリ上に表示される広告の収入でまかなわれているとのことです。

ISO PDF24 Toolsの主な特徴:

1. 様々な機能

  • PDFの結合、分割、圧縮、文字の追加、変換など、PDF編集に必要なほとんどの作業が可能です。また、何をしたいのかを起点にしたわかりやすい操作画面になっています。
  • PDFの作成はもちろん、透かし、墨消し、PDFの比較、画像抽出、注釈の貼り付け、WordやExcelへの変換やOCR処理など、市販品と引けを取らない機能が提供されています。

2. オンライン版とデスクトップ版の提供

  • PDF24 ToolsはWebブラウザ上から利用できるオンラインアプリです。
  • PDF24 Creatorという名称でWindows 用デスクトップ版(Windows上で動くソフトウェア)も提供されています。
  • PDF24 Toolsは商用でも制限なく無償で利用できます。

3. セキュリティーとプライバシー

  • PDF24にアップロードされたファイルは、約1時間後に自動的にサーバーから削除され、すべてのファイルは転送時に暗号化されます。

4. 簡単な操作性

  • PDF24は使いやすさに重点を置いており、ファイルのアップロードや編集が直感的に行えます。ほとんどの機能がマニュアルを見なくても理解できるでしょう。
  • 使ってみればわかるのですが、「JPEG保存」ボタンとすべきところを「PDF保存」とするような誤字や、「PDFに署名する」(手書きの画像を貼り付けるだけの機能)といった、ちょっと勘違いしそうな機能名などがあり、注意が必要です。

PDF24は、PDFの作成、変換、ページ編集などの基本的な機能をほぼ網羅しているといってよいでしょう。ただ、無料で利用できる分、編集結果や品質に見劣りする点も多々あります。例えば、「PDF 編集」機能では今のところPDF上の文字の再編集はできません。また、検索可能な透明テキストを追加できる「PDF COR」機能は、多言語をサポートし、日本語の縦書きも出力できると書かれていて、高機能そうに感じますが、OCR処理する前の画像上の文字の位置とPDF化した後の文字の位置情報が大きくずれるなど、使用に耐えない機能も見うけられます。とはいえ、こうした不具合の多くは、世界中の多くのユーザーからの声を反映しながら、時間とともに改善されていくと思われます。
その他の人気のあるオンラインPDFサービスを下記にてご紹介します。

  • 優しい操作性が特長。PDFの結合、分割、圧縮、変換などの基本的な操作が簡単に利用可能。
  • デジタル署名など一部の機能が有償。
  • PDFの文字編集が可能など高機能。
  • ダウンロードに時間制限あり。一部の機能は有償。
  • ユーザーフレンドリーなインターフェース、PDFの圧縮、結合、分割などの基本的な機能を提供。
  • 高機能。PDFの文字編集など一部の機能は有償。
  • オンラインでPDFファイルを作成、編集、変換するための包括的な機能を提供。
  • メニューからの機能選択や一括処理がやりやすいなど、まるでデスクトップ版のような操作性。一部に英語表記が残っており、英語が苦手なユーザーは要注意。
  • 一部機能は有料。
  • AdobeはPDFの元祖であり、そのオンライン版も業界最強レベルの高度な編集機能を提供。
  • 全ての機能を利用するにはサブスクリプションが必要。

PDFオンラインサービスの注意点

各サービスで機能や品質に差があると思われますが、この辺は実際に利用して確認するしか方法がありません。
また、フォントは全てのPDFのオンラインサービスで共通して気を付けなければならない点です。
例えば、PDF上に文字を挿入する場合、通常、そのフォントを使った文字の追加はできません。PDFにフォントが埋め込まれていても、そのフォントは表示用や印刷用でのみ利用可能で、編集のための再利用はできません。フォントに影響する編集作業をする場合、そのサービス上で提供されているフォント(サーバー上のシステムで使うことが可能なフォント)しか選ぶことができません。PDFをWordなどに変換する際も、フォントについてはまた違う形での制約があります。
次回の後編では、オンラインサービスを利用する際の注意点などを具体的にご紹介する予定です。

PDFオンラインサービスの未来

PPDFオンラインサービスが一般的になることで、いつでもどこでもPDFを扱える環境が整備され、利用者の生産性がさらに向上することが期待されます。また、デジタル化が進む現代において、PDFオンラインサービスはさらに進化し、便利になることが予想されます。
今後は、AIの技術が応用されることで、より高度な編集や自動化された機能が利用可能になると同時に、検索や要約、読み上げといった文書へのアクセスや管理の手法も激変するでしょう。

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